株で絶対に負けない方法は「株をやらないこと」です。
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眠りから覚めたとき、カーテン越しに暑い日光が差していて、オレは思わず手のひらで影を作った。
何時だ、今。
そう思ったとき跳ね起きた。
目覚まし時計は、夕方17時を指している。
寝過ごすにもほどがある。
遅刻どころの話じゃない。
ヤバイ、今すぐ電話を。
と思って携帯を見たら、着信歴が全くついていなかった。
普通、朝礼が始まる頃辺りに出勤してこなかったら、誰かが電話をしてくるものだと思うが、今日の着信は一件もなかった。
それを見て、オレはようやく今日が休みであったことを思い出し、胸を撫で下ろした。
それにしても毎日鳴るようにセットしているはずの目覚まし音で起きないとは。
今日が出勤日だったら確実に遅刻して、上司にあれやこれやと言われていることだろう。
たまたま休日だったというのは、何にも増して幸運だったといったところか。
知らなかったオレがマヌケなだけだけど。
休みの日に起きてすぐすること、それは株価のチェックだ。
腹ごしらえに適当なものを齧りつつ、PCを立ち上げた。
場中は結構な荒れ具合だったようだが、総合的な終値はプラスとなっていた。
上下に激しく動いた個別チャートを見ると、寝過ごして正解だったといえるかもしれない。
休みであることをいいことに、場中に張り付いて感情的に売買すると買いと売りの往復で手痛い目に遭っていたところだ。
負けが込んできている今のオレのことだから、若干買い気配の見られた前場にあれもこれもと買い注文を出し、後場のGDから始まる下落で絶叫し、いくつかをナンピンし、いくつかをドテンし、場が引けてから激しく後悔する、というような展開になっただろうことは容易に想像できた。
まぁ昨日大きくやられた分、大人しくしていれば多少のリバが来るのも当然か。
もしかしたら昨日のマイナスを戻し、更にプラスになる? などということを妄想してはいたが、そんな都合の良いことが起きることはなく、資産はせいぜい半値戻し程度のものだった。
昨日はアミの店から帰って来るなり眠ってしまったから、掲示板、ブログなどの閲覧を一切やっていない。
オレのポジションたちは前日比プラスとなったので、今日は割と良い一日なわけだが、他のギャンブラーたちはどうなったのか。
ちょっと掲示板を覗いてみた。
昨日のオレは妙な仕手株に手を出して大きくやられたというわけではないので、その日の下落で損を被った連中は他にも多数いるようだ。
どこまで本当なのかはわからんが、怒りや悲しみ、希望や絶望が溢れ返っていた。
オレは今の相場で、オレだけが損しているわけではないことに、多少の安心感を覚えた。
みんなが損しているから自分も損していい、と思っているわけではないが、自分だけ下手くそだといわれているわけではないというのは、損以上の精神的ダメージを受けなくていいということでもある。
オレは今日がプラスになったこともあり、連中の書き込みを穏やかな気持ちで見つめていた。
オレに関係してそうなレスを探すと、最近はオレが自身のブログに細かい売買記録を載せないせいか、ブログに対する不満というか、落胆がちらほら見られた。
前から思っていたが、ここの連中は基本的に「誰がどのように損をした」ということにしか興味がないらしい。
ほぼ毎日更新しているこの無駄に長いブログは、いったいどれくらいの人に読まれているのだろうか。
仕事が終わってからせっせと文字をタイプする作業が何の意味を成すのか、今更ながらに疑問が沸く。
そう思ってブログのほうを見ると、記事に対してのコメントがいくつかついていた。
どれも短いコメントだったが、内容からは記事の全文を読了していそうな雰囲気が伝わってきて、少し嬉しい。
ブログにコメントがつくと、メールが届くように設定されているが、それによると今日のコメントは公開されているものに加えてもう一件あるらしいことがわかる。
最後の一件はたまにあるシークレット、つまりオレにしか見られない設定で送ってきたというわけだ。
いちいち管理画面に戻って確認するのは面倒だが、これもせっかく頂いた反響の一つだ。
オレは画面を操作して、問題のコメントを見つける。
もの凄い不快感がオレを襲った。
『初めてコメントします。
九電さんのブログ、最近見つけました。
九電さんにこんな趣味があったなんて驚きです。
普段とは違う九電さんを見つけられたこと、私は驚くと同時に、とても悲しく思いました。
九電さん自身、わかってらっしゃると思いますが、株はギャンブルです。
株をやる人全員がそう思っているとは思いませんが、九電さんがやっていることは完全なギャンブルです。
九電さんには他にやることがあると思います。
自由な時間とお金を何に使おうと勝手だと思われるかもしれませんが、少なくとも私はブログの記事を読んで辛くなりました。
私は株のことはわかりません。
買ったこともないですし、買おうと思ったこともありません。
でも九電さんの書く記事を読んでいて、とても一般の人が趣味として続けていて良い分野だとは思えなくなりました。
九電さんの書く記事からは「株は怖いもの」「絶対に近づいてはいけないもの」ということしか読み取れないのです。
私個人の考え方で恐縮ですが、九電さんは今からでも株をやめるべきです。
どうしようもなくなると、誰の手にも負えなくなってしまいます。
まだブログを書く気力があるうちに、手を引くべきだと思います。
直接言おうかとずいぶん悩んだのですが、九電さんには九電さんの立場がありますよね。
出すぎたマネをするのは失礼かと思い、こういった形を取らせて頂きました。
長くなりまして申し訳ありません。
ただ九電さんのブログを閲覧する人たちの中には、私のような者もいるということを心のどこかに留めておいて頂ければと思います。』
見たことのないIPだった。
オレのブログには名を名乗らずにコメントを残す者も多いが、ブログの管理権限を持つオレには書き込んだもののIPが筒抜けとなっている。
だから名を名乗らなかったり、途中でHNを変えたりしたとしても、同一人物からの書き込みなら判別できるわけだ。
しかしこのシークレットコメントを残した者は、自身が言うとおり過去に書き込んだことのない人物だった。
誰だコイツは。
『普段とは違う九電さん』だと?
ということは、普段オレと接している誰かのコメントか?
しかしオレはアミ以外に、オレが株やブログをやっていることを伝えた覚えはなかった。
まさか、アミがこのコメントを?
そう考えるのが自然に思えた。
過去にはアミも「株をやめたら?」と言ってきたのだから。
しかしアミだとすると、なぜこんな手の込んだマネをするのだろうか。
昨日はあんなにも饒舌にオレと話をしていたではないか。
コメントにも『直接言おうかとずいぶん悩んだのですが、』と書かれている。
直接言うことでオレの立場に影響を与える人物となれば、個人的に飲みに行っている店のアミは該当しないはずだ。
じゃあ職場の誰かか?
経緯はわからないが、オレのブログを見つけたということか?
オレの脳裏に何人もの知り合いが浮かんでは消える。
しかし誰を想像しても「コイツだ」と思えるだけの確証はなかった。
何せ特定するために必要な情報が少なすぎる。
一人称に『私』を使っていたり、二人称に『九電さん』を使っている辺り、女性で年下の人間か?
と思えなくもなかったが、ここはネットの世界だ。
オレが場所によって態度を変えるのと同じように、コイツもそれに倣っているだけの可能性が高い。
しかしこれだけは言える。
誰だかわからない知り合いが、オレを見ている。
知られたくないと思っていた株やブログのことを知っている。
それはオレを不安な気持ちにさせるのに十分だった。
オレはそいつのIPを書き留めて、忌まわしいコメントを削除する。
明日、それとなく誰かに聞いてみようか。
もしかしたらオレが知らないだけで、職場の連中の全員が「オレが株やブログをやっていること」を知っているのかもしれない。
知っていてなお、負け続けるオレを心の中で笑っているのかもしれない。
気に入らない。
相手の正体がわからないのに、自分だけが見られているなんて。
気に入らない、気に入らない、気に入らない。
昨日と同じだ。
何もする気になれなかった。
ブログの記事を新しく書いていても、これが知り合いの誰かに筒抜けになっているのかと思うと、思い切ったことを書けない。
シークレットでコメントを送ってきたヤツがどんなつもりでコメントしてきたのか知らないが、オレから日常を一つ奪ったことだけは確かだ。
明日は仕事。
行きたくねぇな、心から。
何時だ、今。
そう思ったとき跳ね起きた。
目覚まし時計は、夕方17時を指している。
寝過ごすにもほどがある。
遅刻どころの話じゃない。
ヤバイ、今すぐ電話を。
と思って携帯を見たら、着信歴が全くついていなかった。
普通、朝礼が始まる頃辺りに出勤してこなかったら、誰かが電話をしてくるものだと思うが、今日の着信は一件もなかった。
それを見て、オレはようやく今日が休みであったことを思い出し、胸を撫で下ろした。
それにしても毎日鳴るようにセットしているはずの目覚まし音で起きないとは。
今日が出勤日だったら確実に遅刻して、上司にあれやこれやと言われていることだろう。
たまたま休日だったというのは、何にも増して幸運だったといったところか。
知らなかったオレがマヌケなだけだけど。
休みの日に起きてすぐすること、それは株価のチェックだ。
腹ごしらえに適当なものを齧りつつ、PCを立ち上げた。
場中は結構な荒れ具合だったようだが、総合的な終値はプラスとなっていた。
上下に激しく動いた個別チャートを見ると、寝過ごして正解だったといえるかもしれない。
休みであることをいいことに、場中に張り付いて感情的に売買すると買いと売りの往復で手痛い目に遭っていたところだ。
負けが込んできている今のオレのことだから、若干買い気配の見られた前場にあれもこれもと買い注文を出し、後場のGDから始まる下落で絶叫し、いくつかをナンピンし、いくつかをドテンし、場が引けてから激しく後悔する、というような展開になっただろうことは容易に想像できた。
まぁ昨日大きくやられた分、大人しくしていれば多少のリバが来るのも当然か。
もしかしたら昨日のマイナスを戻し、更にプラスになる? などということを妄想してはいたが、そんな都合の良いことが起きることはなく、資産はせいぜい半値戻し程度のものだった。
昨日はアミの店から帰って来るなり眠ってしまったから、掲示板、ブログなどの閲覧を一切やっていない。
オレのポジションたちは前日比プラスとなったので、今日は割と良い一日なわけだが、他のギャンブラーたちはどうなったのか。
ちょっと掲示板を覗いてみた。
昨日のオレは妙な仕手株に手を出して大きくやられたというわけではないので、その日の下落で損を被った連中は他にも多数いるようだ。
どこまで本当なのかはわからんが、怒りや悲しみ、希望や絶望が溢れ返っていた。
オレは今の相場で、オレだけが損しているわけではないことに、多少の安心感を覚えた。
みんなが損しているから自分も損していい、と思っているわけではないが、自分だけ下手くそだといわれているわけではないというのは、損以上の精神的ダメージを受けなくていいということでもある。
オレは今日がプラスになったこともあり、連中の書き込みを穏やかな気持ちで見つめていた。
オレに関係してそうなレスを探すと、最近はオレが自身のブログに細かい売買記録を載せないせいか、ブログに対する不満というか、落胆がちらほら見られた。
前から思っていたが、ここの連中は基本的に「誰がどのように損をした」ということにしか興味がないらしい。
ほぼ毎日更新しているこの無駄に長いブログは、いったいどれくらいの人に読まれているのだろうか。
仕事が終わってからせっせと文字をタイプする作業が何の意味を成すのか、今更ながらに疑問が沸く。
そう思ってブログのほうを見ると、記事に対してのコメントがいくつかついていた。
どれも短いコメントだったが、内容からは記事の全文を読了していそうな雰囲気が伝わってきて、少し嬉しい。
ブログにコメントがつくと、メールが届くように設定されているが、それによると今日のコメントは公開されているものに加えてもう一件あるらしいことがわかる。
最後の一件はたまにあるシークレット、つまりオレにしか見られない設定で送ってきたというわけだ。
いちいち管理画面に戻って確認するのは面倒だが、これもせっかく頂いた反響の一つだ。
オレは画面を操作して、問題のコメントを見つける。
もの凄い不快感がオレを襲った。
『初めてコメントします。
九電さんのブログ、最近見つけました。
九電さんにこんな趣味があったなんて驚きです。
普段とは違う九電さんを見つけられたこと、私は驚くと同時に、とても悲しく思いました。
九電さん自身、わかってらっしゃると思いますが、株はギャンブルです。
株をやる人全員がそう思っているとは思いませんが、九電さんがやっていることは完全なギャンブルです。
九電さんには他にやることがあると思います。
自由な時間とお金を何に使おうと勝手だと思われるかもしれませんが、少なくとも私はブログの記事を読んで辛くなりました。
私は株のことはわかりません。
買ったこともないですし、買おうと思ったこともありません。
でも九電さんの書く記事を読んでいて、とても一般の人が趣味として続けていて良い分野だとは思えなくなりました。
九電さんの書く記事からは「株は怖いもの」「絶対に近づいてはいけないもの」ということしか読み取れないのです。
私個人の考え方で恐縮ですが、九電さんは今からでも株をやめるべきです。
どうしようもなくなると、誰の手にも負えなくなってしまいます。
まだブログを書く気力があるうちに、手を引くべきだと思います。
直接言おうかとずいぶん悩んだのですが、九電さんには九電さんの立場がありますよね。
出すぎたマネをするのは失礼かと思い、こういった形を取らせて頂きました。
長くなりまして申し訳ありません。
ただ九電さんのブログを閲覧する人たちの中には、私のような者もいるということを心のどこかに留めておいて頂ければと思います。』
見たことのないIPだった。
オレのブログには名を名乗らずにコメントを残す者も多いが、ブログの管理権限を持つオレには書き込んだもののIPが筒抜けとなっている。
だから名を名乗らなかったり、途中でHNを変えたりしたとしても、同一人物からの書き込みなら判別できるわけだ。
しかしこのシークレットコメントを残した者は、自身が言うとおり過去に書き込んだことのない人物だった。
誰だコイツは。
『普段とは違う九電さん』だと?
ということは、普段オレと接している誰かのコメントか?
しかしオレはアミ以外に、オレが株やブログをやっていることを伝えた覚えはなかった。
まさか、アミがこのコメントを?
そう考えるのが自然に思えた。
過去にはアミも「株をやめたら?」と言ってきたのだから。
しかしアミだとすると、なぜこんな手の込んだマネをするのだろうか。
昨日はあんなにも饒舌にオレと話をしていたではないか。
コメントにも『直接言おうかとずいぶん悩んだのですが、』と書かれている。
直接言うことでオレの立場に影響を与える人物となれば、個人的に飲みに行っている店のアミは該当しないはずだ。
じゃあ職場の誰かか?
経緯はわからないが、オレのブログを見つけたということか?
オレの脳裏に何人もの知り合いが浮かんでは消える。
しかし誰を想像しても「コイツだ」と思えるだけの確証はなかった。
何せ特定するために必要な情報が少なすぎる。
一人称に『私』を使っていたり、二人称に『九電さん』を使っている辺り、女性で年下の人間か?
と思えなくもなかったが、ここはネットの世界だ。
オレが場所によって態度を変えるのと同じように、コイツもそれに倣っているだけの可能性が高い。
しかしこれだけは言える。
誰だかわからない知り合いが、オレを見ている。
知られたくないと思っていた株やブログのことを知っている。
それはオレを不安な気持ちにさせるのに十分だった。
オレはそいつのIPを書き留めて、忌まわしいコメントを削除する。
明日、それとなく誰かに聞いてみようか。
もしかしたらオレが知らないだけで、職場の連中の全員が「オレが株やブログをやっていること」を知っているのかもしれない。
知っていてなお、負け続けるオレを心の中で笑っているのかもしれない。
気に入らない。
相手の正体がわからないのに、自分だけが見られているなんて。
気に入らない、気に入らない、気に入らない。
昨日と同じだ。
何もする気になれなかった。
ブログの記事を新しく書いていても、これが知り合いの誰かに筒抜けになっているのかと思うと、思い切ったことを書けない。
シークレットでコメントを送ってきたヤツがどんなつもりでコメントしてきたのか知らないが、オレから日常を一つ奪ったことだけは確かだ。
明日は仕事。
行きたくねぇな、心から。
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